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プロダクトの信頼を支える「品質管理」とは何か

Writer: otsubo 更新日:2025/06/26

こんにちは、デジナーレ福岡オフィスの大坪です。

エンジニアの皆様、「Webサービス・アプリ開発」と聞くと、見た目や機能ばかりに目がいっていないでしょうか。もちろん、見た目の美しさや操作の快適さは重要な要素ですが、ユーザーがそのサービスを「安心して使い続けられるかどうか」を左右するのは、実は"品質"が何よりも重要になってきます。
たとえば、どんなに洗練されたUIを持つアプリでも、「ボタンを押しても反応しない」「入力したデータが突然消える」「エラーメッセージが意味不明」といった不具合があると、ユーザーはすぐに不信感を抱きます。一度でもそうした経験をしたユーザーは、もうそのサービスを使ってくれないかもしれません。
品質の低さは、目に見えにくいけれど、ユーザーの信頼を失う最大の原因になるのです。
では、「品質」はどうやってつくられるのでしょうか?
今回は開発における品質管理についてお伝えできればと考えています。

各テストの役割と目的

品質管理とは、単に不具合を修正するのではなく、そもそも不具合が起こらないように設計・開発・運用の各段階で仕組みを整えることが本質です。
品質管理の中心となるのが「テスト工程」です。開発中のアプリが「ちゃんと動くか」「必要な機能が揃っているか」「想定外の動作をしないか」を確認し、問題があれば早期に発見・修正する。この一連の活動が、ユーザーに安心して使ってもらうための礎になります。

テスト工程は、アプリの完成に向けて段階的に行われ、以下の4つのフェーズに分かれます。

単体テスト:部品がきちんと動くか確認

アプリを構成する最小単位を1つずつ確認するテスト。

たとえば、ログインボタンを押したときに正しく認証処理が呼ばれるか、パスワード入力のバリデーションが働くか、といった単位でテストします。
この段階で不具合を見つけて修正しておけば、後工程での手戻りを減らせるため、コスト削減やスケジュール圧縮にも効果的です。

結合テスト:部品同士のつながりを確認

部品単体では問題なくても、組み合わせると意図しない挙動を起こすことがあります。

たとえば、「ログイン → ホーム画面へ遷移」「商品をカートに追加 → 購入処理へ移動」といった複数機能の連携がスムーズに動くかを確認します。

特に、APIとの通信やデータベースの更新など異なる技術要素の連携部分はトラブルが起こりやすいため、注意が必要です。

システムテスト:全体として正しく動くか確認

この工程では、アプリ全体を通してユーザーが実際に操作する流れを想定し、包括的に確認します。

入力ミスをしたときのエラー表示、ページ遷移の速度、スマホとPCでの動作の違いなど、利用者のリアルな体験をシミュレーションします。

また、セキュリティやパフォーマンス、想定外の操作への耐性などもこの段階でチェックします。

受け入れテスト:ユーザー目線での最終チェック

最後に行われるのが「受け入れテスト」です。

開発者ではなく、実際に利用するユーザーやクライアントが中心となって確認を行い、「この仕様で本当に問題ないか?」「業務に支障がないか?」といった視点で評価します。

この工程を通じて、ようやく「品質が保証された」といえる状態になります。

 

品質は「見えない努力」の積み重ねでつくられる

テストというと、「不具合を見つけるための作業」と思われがちですが、実際には以下のような計画的で戦略的な取り組みが必要です。

  • バグ管理表に記録し、傾向や再発を防ぐための原因分析を行う

  • テスト観点をあらかじめ設け、機能・UI・セキュリティ・パフォーマンスなど多面的に網羅する

  • 品質保証ストーリーを描き、「どの段階で、何を、どのように確認するか」事前に設計しておく

これらの取り組みがあるからこそ、ユーザーの見えないところで「安心」が守られています。品質とは、派手さはなくとも、プロダクトの信頼性を支える“縁の下の力持ち”なのです。

 

具体的なテスト観点とは?

テスト工程で「どこを、どのように確認するか」を考える際に重要になるのがテスト観点です。

テスト観点とは、品質を確保するためにチェックすべき視点のリストのこと。これを事前に設計しておくことで、確認漏れや属人化を防ぎ、効果的かつ効率的なテストを実現できます。

ここでは、よく使われるテスト観点を6つのカテゴリに分けて紹介します。

1.機能観点「仕様どおりに動くか?」

最も基本的な観点です。

  • ボタンを押すと正しい処理が行われるか

  • 入力に対して期待される出力が返ってくるか

  • 計算ロジックやフローに誤りがないか

例:削除ボタンを押して、データをテーブルから削除するアプローチを行った時に、正しくデータが削除され、DB上のフラグが更新され、画面上で非表示になるか?

2. 入力バリデーション観点「不正な入力を正しく弾けているか?」

想定外の入力に対して、エラー表示が出るかどうかを確認します。

  • 未入力や桁数制限のエラー

  • 数字フィールドに文字列を入力した場合の処理

  • SQLインジェクションやXSSなどのセキュリティ観点もここに含まれます

例:メールアドレスに「@」が含まれていない場合、エラーメッセージが表示されるか?

3. UI/UX観点 「ユーザーが迷わず操作できるか?」

機能が正しく動いても、使いづらければ意味がありません。

  • ボタンやリンクの配置が直感的か

  • モーダルやアラートの表示タイミングが適切か

  • スマートフォンでもレイアウトが崩れていないか(レスポンシブ対応)

例:保存ボタンが画面下部に常に表示されていて、ユーザーが迷わないか?

4. パフォーマンス観点 「動作が重くないか?」

ユーザー体験に大きな影響を与える観点です。

  • 画面の読み込み速度

  • APIのレスポンスタイム

  • 大量データ表示時の動作

例:一覧画面に100件のデータを表示しても、スクロールがスムーズに動作するか?

5. セキュリティ観点 「不正アクセスや情報漏洩のリスクはないか?」

特に顧客データや決済機能がある場合は、厳しくチェックする必要があります。

  • 認証・認可の実装が正しいか(例:管理者だけが管理画面にアクセスできる)

  • パスワードの保存形式(平文で保存していないか)

  • エラーメッセージに内部情報が含まれていないか

6.エラーハンドリング観点 「不測の事態に対応できているか?」

システムは常に正常な条件で動くとは限りません。
「問題が起きたときにユーザーにどう伝えるか」「操作を続けられるか」を意識して確認します。

  • 通信エラーが起きたときの挙動

  • サーバーから不正なデータが返ってきたときの画面表示

  • 入力中にブラウザを閉じたときの処理

例:サーバーがタイムアウトした場合、ユーザーにわかりやすいエラーを表示しているか?

 

観点を明確にすると、テストの品質も上がる

このように、あらかじめ観点を洗い出しておくことで、属人化せず、誰が見ても同じ品質を目指せるようになります。

また、クライアントへの説明や他チームとの連携にも役立ち、「なぜこの項目をテストするのか?」を合理的に説明できます。

さらに、テスト観点は「要件定義」や「設計レビュー」といった上流工程での確認材料としても使えるため、後工程での手戻り削減にもつながります。

 

品質は、誰かひとりでは守れない

品質は「誰かの仕事」ではなく、チーム全体でつくる文化として根付かせることが重要です。

バグのないプロダクトはありません。

しかし、「どこで、どんな問題が起こるか」を予測し、それを未然に防ぐための工夫と姿勢があるかどうかで、ユーザーの信頼は大きく変わります。

アプリ開発における品質とは、目に見えない信頼の積み重ね

そして、テストはその信頼をつくるための、最前線にある活動です。

テスト項目やルールを守るだけでなく、「なぜそれが必要なのか?」を理解し、自分で考えて動けること。それができるチームこそが、本当の意味で"品質の高いプロダクト"を届けられると思います。